すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
暗い寝室のベッドの隣にあるサイドテーブルの一番上の引き出し。
そこを開けて中に入っている鍵付きの小箱を手に取ろうとした時、藍里はふと我に返った。

ーーそうだった……。薬を飲む回数を減らすって決めたばかりだった……。

中途半端に手を止め、藍里は暫く葛藤していた。

回数を減らすのであって完全に止めるわけではない。
なので今日みたいに気落ちして眠れなさそうな日は飲んでも良いと思う。

けれどパックのサンドイッチや手作りのおにぎり……智大が藍里の為だけに用意してくれた物を思い出して小箱に伸ばした手をギュッと握った。

「決めたんだもん……限界まで頑張ってみよう」

必要な薬だけを飲むと引き出しを閉めてベッドに乗り、いつもの定位置である落ちてしまいそうなほどの隅っこで丸くなった。

静かな寝室ではドアを閉めていても階下の微かな音くらいは聞こえてくる。
智大が風呂を終えて出てきた音、テーブルに用意した晩ご飯を食べるために椅子を引き座ろうとしている音。

何かしらの音が聞こえる度に藍里はビクッと反応し、緊張からか体が冷たくなり、手が小刻みに震えるのを感じる。
智大が何かしらの行動をすればするだけ、この寝室に来る時間が近付いてきているのを知ってしまう。

「早く……早く寝ないと……早く……」

口に出して呟いてみるが、そんなことで眠れたらそもそも睡眠薬なんて最初から必要ない。
ギュッと目を瞑りガタガタと震え出す体にどうしようもなくなってくると、ついに寝室の外に誰かが……智大が来た気配を感じた。
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