すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「……いつもそんな端で寝てるから寒いんだ。もっと中央の方へ行けばいいだろ」

「え……っ!?」

言いながら智大は毛布ごと無遠慮に藍里を抱えるとベッドの中央に下ろす。
毛布越しにと言えど突然触れられて驚きの声を上げるが、智大は藍里を移動させると満足したのかそのままドアの方へと向かった。

ーーえ?

寝ないの?と瞬きをしながら寝室を出ようとする智大を見ていると、智大は廊下に一歩出てから少しだけ振り返り、少しの間を開けて口を開いた。

「……暫く戻らないから早く寝ろ」

「は……」

返事をしようとしたが智大は返事を聞くことなくドアを閉めて去っていってしまった。
恐怖と戦いながら体の震えを誤魔化し眠ろうとしていたのに、肩透かしをくらった感じがした藍里はいつの間にか強張っていた体の力を抜いた。

「ビックリしたけど……良かった……」

突然触れられたことにはかなり驚いたが、そのおかげかいつの間にか震えは止まっていた。
まだ暫くここに来ないのならその間に早く寝てしまおうと、智大に移動させられた位置で再び丸くなり目を閉じようとしたが、ふと疑問に感じ目を開いた。

「……寝るつもりじゃないなら、どうして来たのかな……」

智大の言動に首を傾げるも、いくら考えても分からなかった。
そうしているうちに大分時間が過ぎ、藍里はいつの間にか眠ってしまったのだけれど、朝になっても寝室のドアが再び開くことはなかった。
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