すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
智大を起こさないように音をなるべく食べずに朝食を作るとキッチンテーブルに二人分用意する。
コーヒーも淹れ、後は食べるだけとなった時、藍里は眉を下げてここから見えるリビングのソファの毛布の固まりを見つめた。

「さすがに起こさないと……だよね……」

朝食の準備の間も目覚めなかったのはそれほど疲れているからなのだろうかと、少し智大の事を心配した。

ゆっくりと、恐る恐るソファに近付き未だに眠っている智大のすぐ近くに立った。
気持ちを落ち着かせるために数回深呼吸して緊張を少しだけ和らげ、藍里は震える唇を懸命に動かした。

「あ……朝ご飯、出来たよ……？」

「……」

何とか声に出してはみたが、自分が思ってたよりも出た声は小さく、智大は全く反応しなかった。

「ち、遅刻しちゃう……起きて……」

「ん……」

今度は少しだけ声が大きくなった。
すると智大は少しだけ身動いで声を漏らしたので、あともう少しだと藍里は少しだけ身を屈ませた。

「お願いだから起きて……ご飯、作ったか……」

「藍里……？」

藍里の言葉は途中で止まった。

やっと起きた智大がぼんやりとした目をして、結婚してから……いや、それ以上前から口にすることのなかった藍里の名前を呼んだからだった。
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