すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「あいちゃんには……出来たらいつか智大の本質を見てもらいたいんだ」

「本質?」

「あいちゃんといる時は言葉少なめで表情が乏しくなってるけど……本当はよく笑ったり話したりして、僕が言うのもなんだけどいい奴なんだ」

警察になるほど正義感もあるしね。と笑顔で言う圭介に胸の辺りにズキッとした痛みを感じてそっと右手でその辺りを押さえた。

圭介が言っている智大は藍里が学校で見かけていた時と同じ、明るく、人当たりもいい人気者の智大だ。
それが藍里の前では全く真逆な態度なのだと改めて知らされて、何故そこまで違うのか、そんなに嫌われてるのか、それなら何故結婚をしたのか……そもそもどうして見合いなどしたのかと考えているうちに胸の痛みも相まって涙が滲んできてしまった。

それを見て慌てた圭介が、あいちゃん、待って。泣かないで?と言っているのが聞こえ、小さく頷くと唇を噛み締めて少しだけ顔を上げた。

「ごめんね、智大の事を擁護するつもりじゃなかったんだ。
ただ、あいつは不器用で……ううん、救いようのないほど不器用な奴だって、そう伝えておきたかっただけなんだ」

そう必死に言う圭介に藍里は涙目のまま首を傾げた。

ーー確かこの前、ショッピングモールで会った同級生らしい男性も同じことを言ったような……。

そう思っていたら突如強い風が吹き、辺りの砂を巻き上げた。
咄嗟に目を瞑ったが間に合わず、藍里は右目に痛みを感じて手で押さえた。
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