すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「あれ、智大？こんなところでどうしたの？」

「どうしたのじゃねぇよ。何こいつ泣かせてんだ」

家で聞くよりも明らかに乱暴で苛立っているような声と態度と言い方に、話しかけられてるわけでもない藍里の方がビクビクしてしまう。
反対に圭介はこんな感じの智大に馴れているのか、いつも通りのんびりした感じだった。

「あいちゃんと話してたらいきなり強い風が吹いてさ。目の中にゴミが入ったみたいなんだけど、擦っちゃったから止めただけだよ」

「不用意にこいつに触るな。この前も兄貴のせいで発作がおきただろ」

「……そうだったね、僕が近付きすぎたからだったね」

頑なな智大の態度に今は自分の言葉が届かないと察した圭介は自分が折れることにしたようだ。
ごめんね、あいちゃん。と圭介が苦笑して手を離すと、藍里はゆっくりと掴まれていた腕を反対の手で覆うように触れて頷いた。

「で、智大はこんなところでどうしたの？サボり？」

「誰がサボるか。今日は日勤だったんだよ」

「へえ、それはお疲れ様」

腕が離れたのにまだ不機嫌そうにしている智大に終始笑顔の圭介。
対照的な二人に藍里は数回瞬きをして目尻に溜まった涙を一つ溢した。