すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
然程広くない休憩室で朝に作ったサンドイッチを黙々と食べていると、誰かが入ってきた気配がしてそちらに目を向けた。
目が合ったのは藍里が新人の時からお世話になっている先輩トリマーで、テーブルを挟んだ向かいの椅子に座って藍里の昼食を見ると、眉を潜めながら身を乗り出してきた。

「またそれだけしか食べてない!そんなんじゃ大型犬が来た時に力が出なくて相手出来ないわよ?」

「……お昼はそんなにお腹空かないんです。大型犬は……気合いで相手します」

納得がいってないような顔をしながら先輩は藍里の向かいの席に座り、自分のお弁当を広げる。
そこには彩りのいいおかずが綺麗に詰め込まれていて、藍里は感嘆の息をついた。

「うわぁ……いつもながら先輩のお弁当は彩り鮮やかですね」

「旦那がうるさいのよ。食事は見た目も大事だから色んな色を入れろって」

迷惑そうな言い方をしつつも目を細めて微笑んでいる表情を見て、仲が良いんだなぁ。と微笑ましく思った。

「そんなことより、私は小蔦……じゃない。永瀬の事が気がかりでならないわ」

「私ですか?」

「あんた、ただでさえ少食だったのに最近……ううん、結婚してからさらに食事の量減ってない?」

大丈夫なの?と心配そうに問われて藍里は苦笑しながら、大丈夫ですよ。と答えた。

確かに、元から少食の藍里はお弁当箱もかなり小さな物を持参していたのだけれど、結婚してからは徐々に食欲がなくなっていき、お昼は小さなサンドイッチを二切れほどしか食べられなくなっていた。
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