すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「もうゴミは流れたかな?はい、これ使って」

「あ……ありがとう、ござ……」

います。と最後まで言う前に、圭介から差し出されたハンカチは藍里が受けとる前に智大に素早く取り上げられた。
かと思うと乱暴に藍里の膝にハンカチを放り投げるとすぐに明後日の方向を向いた。

「……乱暴だね?僕とあいちゃんの手が間違って触れないようにって?
自分から渡すって一言言えばいいのに」

智大の行動に一瞬混乱していた藍里は圭介の言葉に、そうなの?と思いながらハンカチを見つめていた顔を上げた。
圭介は変わらず苦笑していて智大は何も話すことなくそっぽを向いているので、圭介の言葉が真実かどうか分からなかった。

「あいちゃん知ってる?智大って本当は思うところがあって行動してるのに、何にも言わないで素っ気ない態度を取るから理解されないんだよ。
一言だけでも言えば誤解されないのにね……」

「いい加減黙れ。そして、さっさと帰れ」

にこにこと笑顔で話しかけてくる圭介に、さっきよりもさらに不機嫌になる智大。
この不機嫌な智大と今日はずっと家にいないといけないのかと思うと藍里はどこかに逃げ出したい気持ちになった。

「うん、言われなくてもそろそろ帰ろうと思ってたところだよ。
ほら、智大、笑顔笑顔!あいちゃん怖がらせてるよー」

「うるせぇっ!兄貴が不機嫌にさせてるんだっ!!早く帰れっ!!」

突然の智大の怒鳴り声にビクッと肩を跳ねさせ、ハンカチを両手で握り締める。
そんな藍理に一瞬目をやった圭介は大人しくしていたマルを抱き上げて、じゃあねー。と笑顔で去っていった。

残ったのは怯える藍理と苛立たしげに頭を乱暴に掻いている智大。

長い溜め息を吐いてから智大は藍里を見ることなく、さっきまで圭介が座っていたベンチの端へ腰かけた。
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