生簀の恋は青い空を知っているか。

ご飯を終えて、駅で鼎と別れた。これからバイト終わりのきーくんを迎えに行くらしい。

「気を付けてね」
「はーい、じゃあまた」
「おやすみ」
「おやすみなさい」

ひらひらと手を振る鼎はやはり生粋のお嬢様のようだったし、わたしはきっとそれには一生なれないんだとも思った。

家に帰るとしーんとしていた。

浅黄さんがわたしより先に家にいることはまずない。朝も、私より後に出ることはまずない。

「行ってらっしゃい」と「おかえりなさい」を口にすることがない。

洗濯物が溜まっている。明日洗いに行かないと。

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