生簀の恋は青い空を知っているか。
見つめ合って十秒。


「誕生日おめでとー、松葉」

同時に乾杯とグラスがぶつかる。

ぐいぐいと良い飲みっぷりの二人。酒飲みの友達二人は他人の誕生日にかこつけて飲みたいだけだ。
それを知っていてわたしも来てしまうんだけれど。

「いくつになったのよ松葉ちゃん」
「もう酔ってる? 同い年でしょう」
「26歳って、立派にアラサーよねえ」

はー、と溜息を吐きながらワインをくるくると回すのは鼎。
きょとんとした顔でビールを呷るのは理美。
どちらも中学からの友人。

「あの頃はまさか酒を酌み交わす仲になるなんて思わなかったわ」

鼎は肩を竦める。

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