生簀の恋は青い空を知っているか。

いやまさかね、とすぐに否定する。

「浅黄さん」
「ん」
「格好良かったですよね」
「んー」
「富山さん。サイン、貰い忘れました」

カッと目が開いた。ぐっと肩を掴む力が強まり、体が近付く。唇が重なり、少し開いたその間から舌が入り込んだ。

初めての感触に頭を引くけれど、後頭部を押さえられた。逃げることのできない状態になって、じわりと手に汗をかく。

口の中を絡めとられ、浅黄さんの舌の柔らかさに慄いた。他人の舌の柔らかさを知ることになるとは思わなかった。

溢れた唾液まで舐め取って、浅黄さんは自分の唇を舐めた。ぼんやりとそれをみることしか出来ない自分がいる。

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