生簀の恋は青い空を知っているか。

わたしも結構、今心の中が嵐みたいだ。

言葉で制止するのがやっとだ。

「飲みに行こう」
「え?」
「今日、飲みに行こう」

五色くんは目をぱちくりさせてこちらを向く。

「あ、はい」

有無を言わせず肯かせた。

「もしかて今のパワハラ?」
「いや、飲みに行くのは良いんですけど、先輩の酒癖の悪さを思い出してました」
「……え、そんなに悪いの?」

後輩にも言われる酒癖の悪さに、軽く目眩を覚える。朝倉さんのことなんて吹き飛ぶほどには。

「酔い始めると酒止まらないし、ぼーっとしてなんかちゃんと帰れるのかよく分からない状態で」

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