生簀の恋は青い空を知っているか。

狙っていたまたしても型落ちの洗濯機の値段と比べても桁がひとつ違う。
これだからお金持ちの金銭感覚は……。

今更のようにそれを実感する。

「少し考えてからにします」

店員さんにそう言うと、察してくれたらしく「何かあれば呼んでください」と去っていった。
その背中を見てから浅黄さんの隣に並ぶ。

「あっちにあるのが良いです」
「却下」
「そんな見もせずに……!」
「型落ち買ってまた数年で壊れるって繰り返すのか」

ぐっと言葉に詰まる。繰り返すつもりで買うわけがないのに、そうなってしまうのは機械だから仕方ないことだ。

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