生簀の恋は青い空を知っているか。
「これ持っとけ」
ブラックカードを押し付けられて、思わず後退する。
新手の嫌がらせだろうか。
「嫌です」
「家の買い物するときはこれで払ってくれ。そういえば君、食費とか消耗品のことも何も言ってこなかったよな」
「だってそれはわたしが作って食べる分ですし」
何よりそのカードをどこかに置いてきたら、と考えるとぞっとしてしまう。
そんなカードを持って電車移動なんてできない。
帰りは、浅黄さんはタクシーに乗せて帰らせよう。
「じゃあ俺がこっちを借りる」
「ええええ、それはちょっと」
何を血迷ったのか、わたしのカードを握ってそう言う。