生簀の恋は青い空を知っているか。

煩くなってしまった心臓を抑えて、どうにかしてランチを食べ終えた。食後のコーヒーを飲んで店を出た。

「あ、晴れてる」

夕暮れの光が雲の切れ間から差し込んで眩しい。
眩しいのを分かっていて、目を細めながらもそちらを見てしまう。

やっぱり光のある方は綺麗だから。

歩き出してから傘を忘れたことに気づく。二人して店に戻った。

「よし、かったな」
「洗濯機ですか」
「いや、勝負」

しょうぶ? とは思ったけれど、次はきちんと変換ができた。

「相手を好き勝手にできる権利を獲得した」

少しニュアンスの変わったそれに、嫌な意味で心臓が煩くなったのは、言うまでもない。

< 177 / 331 >

この作品をシェア

pagetop