生簀の恋は青い空を知っているか。
女心は秋の空。

ピ、ピ、と電子音が響く。

ベッドの傍らに椅子を引っ張って、窓の外を見ていた。
夏のピークを過ぎて、少し空が遠くなっていく。

もうすぐ二年になる。

この前、実家に帰って兄の部屋でスマホを見つけた。充電はとっくに切れているけれど、解約はされていない。今も兄の口座からは携帯代は引き落とされているということだ。

確かに理美からのメールが入っていて、それを読んで苦しくなった。

届くことのないメールと、使われない携帯と、それを知っていて何もできないわたし。

いちばん、わたしが駄目だ。

兄の部屋から出ると、母が少し驚いた顔でその前にいた。

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