生簀の恋は青い空を知っているか。

替えられたばかりの花瓶の花が、頭を垂れていた。




明日何かあったな、と思いながら洗濯物を畳んでいた。それが思い出せなくて、モヤモヤしていると浅黄さんが帰ってきて、思い出した。

「あ、おかえりなさい」

目をパチクリさせながら「ただいま」と小さく浅黄さんは言った。疲れているのだろうか。

「明日着るの、鼎の誕生日会で着たドレスで良いですか?」
「ドレス……他に無いのか?」
「全部実家に置いてきました」
「明日買いに行くか」
「え、そんな、明日着るだけですから……」

浅黄さんはジャケットを脱ぎながら、震動する携帯を見た。

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