生簀の恋は青い空を知っているか。

ここまでくると拒むことも疲れてしまって、それら一式を買うことに決めた。

その前に試着を、と言われて試着室に入る。

鏡に映る自分を見る。えらんだドレスに着せられている自分がいる。
昨夜憂鬱な気分でいたのがぶり返してきた。

「奥様、サイズは大丈夫でしょうか?」

長い間ぼーっとしていたからか、店員さんが扉の向こうから声をかけてくる。

「すみません、大丈夫です」

着ていた洋服を入れた紙袋を持って、試着室から出る。
そこには浅黄さんが居た。

吸い込まれるように目が合って、数度瞬き。

「微妙」
「「え」」

わたしと店員さんの声が揃った。

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