生簀の恋は青い空を知っているか。
格好良い人は何を着ても似合うのだから良い。わたしは服に選ばれないと着られないというのに。
「色々煩い取引先なんだよ。ちょっと協力してくれ、奥さん」
ぽんと頭を撫でられる。ぽんと心が弾むのが分かった。
本当にずるい。そういうのはずるい。
「店員さん着たら教えてください」
「え、ちょっと待ておい」
これ以上話すのが辛くなって試着室の扉を閉めようとするも、浅黄さんの手に止められる。
「協力とか……もっと可愛い女性を選べば良かったですね!」
「はあ? 君も十分可愛いだろ」
「もっと素敵で、何のドレスも着こなせるような……」
言っていて悲しくなったのでやめた。