生簀の恋は青い空を知っているか。

浅黄さんから返事がなくて、そちらを見上げると目があった。どきりとする。

誰かを好きになると、目が合うだけで心臓が狂ったみたいに鳴るのだと、最近知った。
何をしてなくても、浅黄さんがいるだけで、胸が一杯になってしまう。

なにこれ、怖い。

「却下」

バッサリ言われて、持っていた紙袋と手を取られた。駐車場に向かう浅黄さんの後ろを歩いて、黒塗りの車の横に着いた。

「今日は君のこと、好きにして良い日だったよな?」
「う、まあ、そうですね」
「はい、乗って」

助手席の扉が開けられて、乗り込んだ。

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