生簀の恋は青い空を知っているか。

友人の結婚式に出るためのドレスが一着増えたことに関する感謝だ。パーティーには行きたくないけれど。

ん、と浅黄さんから短い返事があった。

「煙草吸って良い?」
「どうぞ。吸うんですね」

家に灰皿の類を見かけなかったから、吸わないと思っていた。わたしの返答に何を思ったのか、浅黄さんがこちらをじっと見る。

「……やっぱいい」
「……そうですか」

……なんだろう、この会話と空間は。

次第に重くなる雰囲気に、わたしは泣きたくなる。浅黄さんの手がふいにこちらに伸ばされた。

「キスさせて」と言ってわたしの後ろ首に手をまわす。

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