生簀の恋は青い空を知っているか。
行き場のないこの恋は、ただ死ぬだけだ。
生け簀の中で泳いで、ただ死ぬのをじっと待っている。
「人生で大学の時が一番荒れてた」
浅黄さんが言う。わたしは顔を逸らしたまま、富山さんと浅黄さんのいる大学生活を考えた。
「他人は自分の夢とか将来を思い描いてる中、自分は家を継ぐ話で雁字搦めにされて。馬鹿みたいに酒飲んで死にそうになったり、女関係でトラブル起こしたり」
……わたしとは程遠い大学生活を。
「そこで会ったのが悠介と、御堂星奈だった」
浅黄さんの口から出てきた星奈さんの名前が思いの外強くて、泣くかと思った。