生簀の恋は青い空を知っているか。
どうせ、と言葉が出てくる。
「どうせ、わたしはアホですよ」
「アホみたいにかわいい」
「え?」
「可愛いって言ったんだ」
口を噤む。わたしはそちらを見た。浅黄さんはこちらを見ていなかった。
どうしてか。
さっきわたしが顔を背けた理由と同じかもしれない。
「なんですか、急に、揶揄ですか」
「いや、惚気」
ぱっとこちらを向く。得意げに笑うその顔に、胸を貫かれた。
きっと致死量。きっとばれた。
わたしが浅黄さんを好きなのがばれた。
そして、浅黄さんも。
「わたしのこと、好きなんですか?」
同じ質問をさっきも聞いた気がした。