生簀の恋は青い空を知っているか。

どうせ、と言葉が出てくる。

「どうせ、わたしはアホですよ」
「アホみたいにかわいい」
「え?」
「可愛いって言ったんだ」

口を噤む。わたしはそちらを見た。浅黄さんはこちらを見ていなかった。
どうしてか。
さっきわたしが顔を背けた理由と同じかもしれない。

「なんですか、急に、揶揄ですか」
「いや、惚気」

ぱっとこちらを向く。得意げに笑うその顔に、胸を貫かれた。

きっと致死量。きっとばれた。

わたしが浅黄さんを好きなのがばれた。

そして、浅黄さんも。

「わたしのこと、好きなんですか?」

同じ質問をさっきも聞いた気がした。

< 226 / 331 >

この作品をシェア

pagetop