生簀の恋は青い空を知っているか。

ちょうどお兄ちゃんに用事があって、出掛けた。休日のことだった。

オートロックのマンション。ロビーで部屋番号を呼んだけれど、返事がなかった。わたしは渡されていた鍵を使って中に入る。

外に出掛けているのか、まだ眠っているのか。

玄関の扉を開けると、中は暗かった。リビングの方も真っ暗で、夜みたいだった。

「お邪魔します」

お兄ちゃんの靴は玄関に綺麗に揃っていた。それがどこか、不安を駆り立てる。

嫌な予感は、往々にして当たるものだ。

リビングにいるとは思わず、寝室の方へと歩んだ。ノックをして静かに開ける。

< 256 / 331 >

この作品をシェア

pagetop