生簀の恋は青い空を知っているか。
ちょうどお兄ちゃんに用事があって、出掛けた。休日のことだった。
オートロックのマンション。ロビーで部屋番号を呼んだけれど、返事がなかった。わたしは渡されていた鍵を使って中に入る。
外に出掛けているのか、まだ眠っているのか。
玄関の扉を開けると、中は暗かった。リビングの方も真っ暗で、夜みたいだった。
「お邪魔します」
お兄ちゃんの靴は玄関に綺麗に揃っていた。それがどこか、不安を駆り立てる。
嫌な予感は、往々にして当たるものだ。
リビングにいるとは思わず、寝室の方へと歩んだ。ノックをして静かに開ける。