生簀の恋は青い空を知っているか。

お兄ちゃんはベッドに横になっていた。薄暗い中、わたしはその姿を見た。

女性と一緒だったらどうしよう、と一瞬頭を過ったので、少し安堵した。

「お兄ちゃん、朝だよ」

ベッドに近付く。サイドテーブルにふと目をやった。最近不眠気味だと言っていた、その薬。

かつん、と足に何か当たった。缶だった。何個もある。アルコールの匂いがした。

ぞわ、と足が震えた。

薬の袋を取って中を見た。空っぽだ。下に落ちていたシートを拾うと、全部穴が空いていた。

「お兄ちゃん!」

それを全部投げ捨てて、兄に寄る。冷たい手が全てを物語っていた。

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