生簀の恋は青い空を知っているか。

思い出して、指で輪っかを作ってみる。
店員さんが困った顔をする。

「お直しも出来ますが、サイズを測ってからの方が宜しいかと……」
「ですよね、すみません」
「とんでもない、大切な方へのプレゼントですものね」

微笑んで、そう言ってくれた。

そうなんです、大切なひと。

わたしは店を出て、空を見上げた。ちょっとだけ雲が出てきている。明日は雨が降るらしい。

お兄ちゃんのところへ行こう。思い立って、病院の方へ足を向けた。

そもそも浅黄さんに指輪をプレゼントしたところで、つけてくれるのかな。根本的な問題を考えながら歩く。

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