生簀の恋は青い空を知っているか。



浅黄さんに言われた通り、結局わたしはぐずぐずと考えていた。

鼎をご飯に誘うことも出来ず、かと言って理美に電話をすることも出来ず。
仕事をだらだらとやって、ミスをして、謝って。

「先輩、大丈夫ですか?」

五色くんが誤字脱字だらけの書類を直してくれた。
缶コーヒーを奢って、更に落ち込んでいるわたしに、心配した顔を見せる。

「最中さんと何かあったんですか」
「……どうして若干嬉しそうなの」
「棚からぼたもちを狙ってるんで」

転んだらただでは起きないタイプらしい。

わたしは決してぼたもちではないけれど。

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