生簀の恋は青い空を知っているか。

夕飯を食べていると、浅黄さんが帰ってきた。
珍しく、日付を跨がない帰宅。

「おかえりなさい」
「ん」

ネクタイを緩めながらコートを脱いでいる。片手で両方を行うのを見て、器用だなと思う。

「そういや、正月に帰ってくるらしい」
「え、何が?」
「親」

洗面所から手を洗って戻った浅黄さんが言った。

お、親……浅黄さんの?

「え!」
「顔見せに来いって言われたけど、一緒に来るか?」
「そ、それは勿論……」

どんな順番だって怒られるかもしれないけれど、行かないという選択肢は今のところない。

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