生簀の恋は青い空を知っているか。

たぶん、鼎のパーティー以来だ。

「こんばんは、お久しぶりです」
「きーくん、久しぶり」

ちょっと笑って、ちょっと会釈した。

「今日もバイトだったの?」
「はい、バイト帰りです。松葉さんは元気ですか?」

尋ねられて「元気だよ」と答える。
身体は元気だ。それは嘘偽りない。

「三人で喧嘩したって聞きました」
「……やっぱり聞いてる?」
「ここ最近で一番面白い事件ですね」
「面白がらないで……」
「ごめんなさい」

言いながらも笑っている。他人事だと思って。

一緒に改札を抜けてホームへの階段を上がる。

< 286 / 331 >

この作品をシェア

pagetop