生簀の恋は青い空を知っているか。
お互い同じ線の反対側の電車に乗るので、そこまで一緒だ。
「鼎、なんか言ってた?」
「何か言うと思います?」
「言わないと思う。わたしたちの中で一番プライド高いもん」
本人に聞いてもそう言うと思う。きーくんも笑っている。
わたしはコートのポケットに手を入れた。
「まあ、一番悪いのはわたしなんだけどね」
電車が来た。わたしが乗る方の電車が先だった。
じゃあ、と手を出して振る。きーくんが口を開いた。
「鼎も同じこと、言ってました」
少し躊躇いながらもそう言うので、わたしは泣きそうになった。