生簀の恋は青い空を知っているか。
夜と月灯り。
車が見えなくなるまで見送って、会社に戻る。
エレベーターに乗って、手で顔を覆う。浅黄さんが休憩中に現れるとは思わなかった。
最初から、急に現れる人ではあったけれど。
驚きと嬉しさと少しの罪悪感がぐるぐるとまわる。
途中の階でエレベーターが止まって、人が入ってくる。
朝倉さんだった。
「お疲れさま」と、わたしを見て少し目を見開いた後、言ってくれた。
「お疲れさまです」
「あの、柴舟さん」
扉が閉まって、上へと動き出す。ふわりと身体の浮く感じ。
「この前の資料、すごく分かりやすかった。ありがとうね」