生簀の恋は青い空を知っているか。
ため息を吐いて、手を引っ張る。
「浅黄さん、わたしと会ったことあります?」
立ち止まってその手を掴み返す。浅黄さんが振り向いて怪訝そうな顔をする。
「いや、お見合い以前の話で」
「ある」
「池を見ながら話をしたような……え、本当に?」
「君、泥酔してたから多分覚えてないと思ったけど」
「いつですか?」
歩き始める。背中に問いかけると、「君が学生のとき」と返答。
「なんでわたし達、話してたんですか?」
揺れる水面に月明かりが反射してキラキラしていたのが蘇る。
確か、あれは夜だった。