生簀の恋は青い空を知っているか。
何を言いたいのか分からない表情。今でもやっぱり分からないことは多い。
「知ってる。祖母さんが言ってたんだろ」
「そうです。でも遡上するだけですごいですよね、わたしは泳ぐだけで精一杯だろうから」
「生きてるだけで良い、君は」
そんなことを言ってくれるのは、浅黄さんだけだ。
「生きていきますよ、わたしは浅黄さんと」
風がふわりと全てを攫って行く。葉を揺らして春を連れてくる。
ぺし、と頭を掴まれた。
「死にかけた奴が言うな」
「あ、気づきました?」
「あほか」
また歩きだす。
あなたと、歩き出す。
空が青い。