生簀の恋は青い空を知っているか。
そんなプライバシーの欠片もないようなことを考えて、我に返る。
「そんな悲しい顔しなくても」
五色くんがこちらを見ていた。目が合って、口元が引きつる。
必死に笑顔を作ろうとした、だけだった。
「そんなに相手、やばい奴なんですか? くそ歳離れてるとか?」
「どうだろ、わたしにとっては、やばい奴かも」
右の掌を顎につけて肘を机についた。
あんなところに住んでいて、わざわざ車で迎えに来てもらえて、てきとーなことを言ってわたしと結婚するような人だ。
やばいと言えば、そうなのかもしれない。
そして、その日はやって来た。