生簀の恋は青い空を知っているか。
わたしの話らしい。
「よく言われます、雨女だって」
笑顔を作って返す。
株式会社キプリナスホテル。最中社長の一人息子。
地方ごとにひとつ大きなホテルを持っていて、知らない人の方が少ない。
「雨は好きだ」
彼は膝を崩して胡坐をかいた。肘をテーブルにつく。
「雨が降らないと虹は出ないからな」
なんてポジティブな。
わたしにはないそれに、彼は見透かしたような笑顔を見せた。
「……どこの小説に出てくる台詞ですか?」
「格好良く決まったんだからそれで良いだろ」
「悪口を最初に言ったのは貴方です」
雨音が酷くなっている。障子の向こうでは世界が濡れているのだろう。