生簀の恋は青い空を知っているか。

社会人になって家を出てから、今日みたいに寝落ちした日だけ夜中に目が覚める。

あ、だから浅黄さんの家で寝てたときも起きられたのかも。

「化粧とシャワー……」

涙が目元の化粧を落として、拭ってそれが目に入って痛い。更に涙が出てくる。

しばらく泣いていた。




五色くんこちらをちらちら窺っている。わたしはPCに向かっていた。

営業のお局の要望を聞いていて、今日までの仕事が溜まっているからだ。
それを彼も知っているはずだった。

「……何?」
「この前見ちゃったんですけど」

待ってましたと言わんばかりに五色くんが身を乗り出してくる。

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