生簀の恋は青い空を知っているか。
雨だけはわたしの味方だ。
彼は手の腹に自分の顎をつける。スーツは確認せずともブランドものだと分かるし、ネクタイもそれに揃えられていた。
わたしのとってつけたようなブランドワンピースとは違う。
「この話、受けよう」
「……え?」
「式はすぐにはできないが、今月中には籍を入れる」
「え」
え、え、としか声を出せない自分が情けないけれど仕方ない。彼はまるで予め決めていたみたいにすらすらと話す。
「とりあえず君はすぐに引っ越しの準備をしろ」
「待ってください、少し待って」
「なんだよ」
「正気ですか?」
「それは悪口か?」
さっきのことを根に持っているのか。わたしは何も返せない。