Wunder〜巡り会えた友〜
「そういえばドイツでは犬にも税金を払わないといけないけど、犬税ってプロイセンの時代からあるんでしょ?歴史の本で見た」

凛がそう言うと、一瞬リーゼロッテの手が止まる。その時の表情は、まるで昔を懐かしむようなそんな目だ。

「リーゼ?」

凛が声をかけると、リーゼロッテは「何?」といつもの顔を見せる。

リーゼロッテは、プロイセンやドイツの歴史の話をすると、いつも遠い昔を思い出すような表情を見せる。その表情は、凛が知る同い年の女の子では絶対に見せることのない表情だ。凛はリーゼロッテのその表情を見るたびに、不思議な気持ちになる。

リーゼロッテと古城巡りをした時もそうだった。シンデレラや眠れる森の美女の城のモデルとなったとも言われるノイシュバンシュタイン城や、小高い山の頂に築かれたホーエンツォレルン城などを観光した時も、リーゼロッテは懐かしそうな目をしていた。

リーゼロッテは、どうしてそんな目をするのだろう。それが凛の一番の疑問だ。
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