Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
…拉致…。


沙耶を…拉致…。


その不穏な言葉の響きに、無意識にゴクリと唾を飲み込んでいた。


【予定通り宮瀬たちには俺らの倉庫に攻め込んで貰えばいい。けど、その倉庫には宮瀬沙耶がいる。それに気づいた宮瀬聖は俺らに手出しできない】


…沙耶を…か。


沙耶は今怪我で松葉杖生活だ。


そんな沙耶を拉致するなんて…あたしにはできない。


沙耶はあたしを友達だと言ってくれた。


そんな沙耶を拉致するなんてできるわけない。


【沙耶じゃなくてあたしじゃダメ?あたしもそれなりに信頼は得てるし】


宮瀬は裏切れても、沙耶を裏切りたくない。


沙耶を傷つけたくない。


…友達だから。


こんなあたしの唯一の友達だから。


【それなりで通用する世界じゃないことぐらい分かってるだろ。相手は宮瀬だ。甘いことは言ってられない】
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