Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
「……っ」 


〝いる〟と言わなきゃ。


言わなかったら作戦は失敗し、宮瀬たちは予定通り神龍へ攻め込む。


そうなれば、ナオは殺されるし、あたしはナオの仲間を撃たざるを得なくなる。


「あれ?ここにいると思ったんだけどな…」


言わなきゃ…答えなきゃ…。


沙耶の足音が小さくなっていく。


言いたくない。


拉致されてほしくない。


でも、ナオには死んでほしくない…っ。


「沙耶…っ。いるよ、あたし。ここにいる…」


ごめんなさい…。


「あ、いたの?大丈夫?他に誰もいないから吐きそうなら遠慮なく吐きなよ?」


優しくしないで…。


これからあたしは裏切るのに…。


「じゃ、外で待ってるからなんかあったら呼んで」 


あたしに気を遣ってか、女子トイレのドアを閉める音がした。


沙耶は今、廊下で勝地さんと待ってるんだろう。
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