Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
「琴吹組の人間ならこのまま逃がしてやってもいいぜ。お前は見ちゃいけない光景を見たんだからな」


…見ちゃいけない光景?


あの集団暴行のことだろうか。


あんなのどこにでもあるケンカだと思ってたけど、違うのか。


「こっから逃げたいか?」


男はナイフを弄びながらあたしに尋ねてくる。


その目は刃以上に冷たい色をしていた。


ゾクッと背中に悪寒が走る。


「逃げたいなら今日からお前は俺の奴隷だ」


奴隷…。


奴隷と聞いて真っ先に浮かぶのは制裁を下された組の人間たち。


あんな風にはなりたくない。


けど、こんなところにずっと居るのも御免だ。


いっそのこと隙をついてこの男を殺してしまおうか。
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