Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
きっとナオは自分が死ぬことを予想していた。


だから家を出る前に片付けて綺麗にしたんだろう。


その証拠に、孝太さんの遺影の前に供えているお花は捨てられている。


自分が死んだら枯らしてしまうと思って捨てたんだろう。


お供えしていた、孝太さんが好きだったお酒もなくなっている。


階段を上がったらナオの部屋だ。


あたしは滅多に入ることはなかった。


入ったのは1度か2度だ。


ナオの部屋のドアを開けると、1階よりもナオの香りが強く感じられた。


この香りに抱きしめられるのが好きだった。


この香りでキスされるのが好きだった。


「…ナオ…」


目を閉じれば瞼の裏にたくさんの思い出が浮かんでくる。
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