Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
「…ここラブホか」


目の前にある建物は流行ってなさそうな寂れたラブホテル。


もう少し歩けばラブホ街があるからこんなところには誰も泊まらないんだろうな。


「…ここならしばらくは安全だな。入るぞ」


まぁあたしたちは二人とも高校生に見えないだろうし、入れるだろう。


宮瀬とラブホに入ることに多少の抵抗はあるけど、命には代えられない。


部屋に入ると悪趣味な紫色の灯りがついていた。


ベッドも固いし、寂れるのも無理ない。


だけど文句は言ってられない。


「しばらくはここにいればいい。俺は組の奴らの動きを探っとく」


そう言って宮瀬はスマホと拳銃をあたしに差し出した。


「プライベート用渡しとく。何かあったらこれで俺に連絡しろ。そんな暇がなければ容赦なく撃っていい。相手が兄貴でもだ」


そう言い切る宮瀬の顔は覚悟で満ちているものだった。


本当の兄のように慕っていた城田さんを殺す覚悟までも…。


そんな覚悟をしてまで宮瀬はあたしを守ろうとしてくれている。


「…ありがと」


「礼なんかいい。その代わり死ぬな。生きろ」


あたしは生きる。


絶対に死なない。
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