Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
疑いの念は晴れていないような返事だったけど、城田さんの足音は遠ざかっていく。


パタンっとドアを閉める音、廊下を早足に歩く音が聞こえ、命拾いしたことを自覚することができた。


「…よかった…」


生きている。


あたしはまだ、生きている。


宮瀬が部屋に着いたのはそれから5分後のことだった。


不機嫌極まりない様子だけど、包帯や消毒を買ってきてくれたようだ。


「…怖がってる場合じゃないから。分かってんだろ。俺が逃げろっつったら逃げろよ」


宮瀬は乱暴にあたしを座らせ、慣れた手つきで手当てを始める。


「い…っ」


消毒が傷口に染みて痛い。


この痛みはいくつになっても痛いままだ。
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