Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
「じゃあちょっと話そうよ。良いお店知ってるから、何か食べながらでもさ」


彼はそう言って黒色の傘をレジ員さんに渡した。


スマートに傘代を出してくれて、〝ついてきて〟とあたしの前を歩く彼。


警戒心なんて全くなく、ただただ彼と話したい、その一心だった。


彼が連れてきてくれたのは、裏路地にある隠れ家的カフェ。


レンガ造りの壁に若々しい緑のツタが伸びているお洒落なお店だ。


カランコロン…


入り口のドアを開けると、可愛い音が店内に響く。


「おぉナオ。ついに彼女できたのかー」


カウンターの奥のキッチンでグラスを拭いている30代くらいの厳つめの人がガハガハ豪快に笑う。


「彼女じゃないっす。捨て猫みたいなもんっすよ」
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