Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
外は炎天下でセミの大合唱。


少し歩くだけで汗がじんわり滲み出てくる。


死の間際のセミが2匹羽をバチバチいわせながら飛び狂い、やがて力尽きたように地面に落ちる。


そんなとても泣ける状況じゃないはずなのに、鼻の奥がツンとし、涙が零れそうになる。


また会える。


毎日会えなくなっただけ。


ただそれだけなのに、永遠の別れのように感じて胸が苦しい。


…泣いてる場合じゃない。


あたしにはやらなきゃいけないことがある。


それを達成するまでは、弱気になっちゃダメだ。


だから泣くなあたし…。


必死に涙を堪えるあたしの傍らに、冷たい色の車が停まった。


降りてきたのは運転手だけ。
< 88 / 406 >

この作品をシェア

pagetop