予言書を手に入れた悪役令嬢は役を降りることにしました。
「それはだから私がこの本に憑いてるからよ。さっきそう言ったじゃない」
「本……に?」

そう言えば何故ここにあの本があるのか。
いつの間にかタイトルの変わっている不思議な本。
ミリアを見つけて運んでくれた人が一緒に持って来たのだろうか?けれどだとしても何故わざわざあの部屋から持ち出したのか。

「あなたがしっかり手に持ってたからあなたの物だと思ったんじゃない?一緒に運ばれてきたのよ。私付きでね」

疑問が顔に出ていたのか、ミリアが口に出すよりも先にアルジェリカがそう言って「ふふ」と笑う。

「ま、そうじゃなくても近い内にあなたのそばに来ていたはずだけどっ」
ーーーだって今のこれは『あなたの物語』になってるんだもの。

さらりと続けられた言葉にミリアは目を丸くする。

「は?」

『あなたの物語』?
ここのあなたはつまりーーー。

「私?」
「そっ。だから私が外に出れるようになったのよ!私が執着していたものと、内容が変わったおかげで繋がりが緩くなったのね。とはいえ完全に切れたわけではないみたいだけど。ほら」

ふわり、アルジェリカの身体が浮き上がってテーブルから離れていく。がちょうど先ほどまで彼女がウロウロしていたあたりーーーミリアやアルジェリカのような女性の歩幅でみて十歩ほどの距離でピタリと止まった。

「この辺りが限界みたい。一定以上離れると引っ張られちゃうのよね。でもでもものスッゴく大きな一歩前進だわっ!今までは本の外に出ることもできなかったのよ?ああ世界が広いわぁ~っ!狭いけどひろ~いっ!!」

ヒャッハ~!とどこぞのザコキャラのような雄叫びを上げて宙をクルクル回り飛び回る幽霊。
それを唖然と見上げながら、ミリアは「えっと、やっぱり良くわかんないんだけど」と、微妙に痛み出したこめかみを指先でほぐした。





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