花時の贈り物


柔らかなBGMとともに流れ出したのは、私たちの入学式だった。

真新しい制服に身を包み、緊張が顔に出ている生徒が多い。自分や友達が映ると、生徒たちが声を出して盛り上がる。


「うわ、黒髪じゃん! このときすっごい幼くない!?」
「未来、隣だったの!? 気づかなかった!」

その中には私の姿も見つけた。このときは緊張していて、誰とも会話をすることなく初日を終えた。積極的に話しかけることができなくて、采花と話すようになるまでは学校に来るのが憂鬱だったな。

入学式が終わると、次は一年生の体育祭。そして、文化祭の準備に追われている様子や当日にクラスTシャツを着て、気合を入れている光景。

どれも懐かしくて、思い出が心に降り積もっていく。


二年生のときの夏に移り変わった。地域のお祭りでボランティア活動をすることになり、屋台をだすことになったときの映像だ。


地域のお祭りをどう活気づけるかという話し合いからはじまり、先生たちの知恵を借りながらリーダーの采花を中心に様々な企画を提案して思考した。


学校の文化祭で使っている屋台の道具などを調達したり、食べ物以外に子どもたちが楽しめる遊び企画もやろうと三ヶ月くらいかけて準備をしてきた思い出深いイベント。


準備の映像から当日の映像に切り替わる。



「いえーい!」と大きな声を出して、ピースサインをしているのは采花と瀬川くんだった。


ふたりに腕を引っ張られて、私も恥ずかしがりながらピースをする。



懐かしい。このとき三人でかき氷を担当していた。

采花と瀬川くんが休憩の間にミックス味を作ると言って、どんな味を掛け合わせたら美味しいかと真剣に悩んでいた。

けれど、かき氷シロップは香料が違うだけで、同じ味だよと教えるとふたりは目をまん丸くしてそんなはずないと騒ぎだしたのだ。


それを目撃した先生が遊ぶなと注意をしにきた。けれどシロップの件で興奮していたふたりは「悠理が変なこと言い出した!」と言って、私も巻き込まれて叱られたんだ。


結局先生も私と同じことを言っていて、ふたりはかき氷シロップが全て同じ味だと知ってショックを受けていた。

思い出すと笑ってしまうくらい楽しい日だった。





そうだ。この日だ。




< 11 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop