花時の贈り物
日がだんだんと沈み、提灯が夜に映える時間になってきた頃。
私はふたりとはぐれてしまった。
生徒たちは町内の施設に荷物をまとめて預けており、その中に携帯電話を置いてきてしまったため、連絡も取れない。
友達と楽しそうにしながらお祭りを満喫している生徒たちを見て、ひとりぼっちになってしまった私は行き場のない寂しさを感じていた。
ふたり以外に親しい人も少ないため、混ぜてもらえそうな人もいない。
私は地味で口下手でクラスの中で存在感が薄い。卑屈になっているわけではなくて、目立つ存在ではないと昔から自覚していたのだ。
それに目立ちたいわけではなかったので、存在感が薄くても構わなかった。
でも、こうしてひとりになったときに襲ってくる不安に心が押しつぶされそうになる。
もしかしたら誰も私を探していないかもしれない。いなくてもわからない存在かもしれない。そう思うと怖くて、虚しくて、はぐれただけなのに情けないほど弱気になってしまう。
露店が並んでいる道は人の通りが多くて揉みくちゃになる。この道を抜けて、人通りが少ない方へ避難しようと歩き出すと、後ろから腕を掴まれた。
「悠理!」
驚いて振り返ると、息を切らした瀬川くんがいた。
「よかった、見つけた」
目を見開き、呼吸が一瞬止まる。
瀬川くんの瞳は私を映し出していて、見つけたと言ったのは私に対してなのだと理解していく。けれど、この気持ちをなんて言葉にしていいのかわからずに戸惑う。
「ど、して……」
「急にいなくなったから焦った! まじで……もー、はぐれんなよ」
お祭りではぐれて、探してくれた。たったそれだけなのに泣きそうになってしまう。いてもいなくても同じだと、自分は誰かの特別にはなれないのだと思っていた。
それでも探してくれた人がいる。息を切らして、走ってきてくれた。
必要としてもらえているような気がして、胸のあたりが熱くなりぎゅっと切ない収縮をする。
私の方が走ってきたのではないかというくらい心臓が速く動いている。