羽のように舞い上がって
靴を取り出そうとすると、後ろから音がした。わたしと同じくらいのタイミングで、男子が靴に履き替えている。
あの下駄箱は、1年C組のだ。
ということは、彼はわたしと同い年、か。
彼の靴紐が、両方解けていて、彼は結んでいる。
まぁ、いいか。
知らない人のことをいつまでも観察していちゃ、いられない。
わたしが靴を履いた時には、彼はもう結び終わっていて、わたしのことを通り過ぎようとしていた。
ふと彼は、わたしのことをちらりと見たが、すぐに目を逸らして、通り過ぎていった。
が、足を止めて、彼は振り返った。
わたしのことをじっと見ている。
「靴の左右」
甘ったるい声で、彼はそれだけ言った。
靴?
わたしは、自分の履いている靴を見た。左右反対になっている。
そういえば、さっき靴を見ないで履いていたものだから、分からなかった。
「あっ! やば! 教えてくれて、ありがとうございます!」
わたしは早口で言って、急いで靴を脱いで向きを直した。