羽のように舞い上がって
わたし達は、店を出た。
「あっ、そうだ真子ちゃん」
敦也くんは自分のカバンから、マシュマロが入った可愛い袋を出した。
敦也くんは、わたしがマシュマロを大好きだということを覚えてくれていたんだ。
敦也くんは、マシュマロをひとつ出して、
「はい、あーん」
とわたしの口のそばに持って行った。
「恥ずかしいから、やめて!」
「そういえば聞いたよ。真子ちゃんは、小さい頃、子猫ちゃんなんて呼ばれてたって。子猫は自分で持って食べること出来ないしね」
全く。彼は、まだふざけることを完全にやめてはいない。
まあ男子は、ふざけるのが普通だから、よしとしておこう。
「もう、敦也くん!」
わたし達は、声を立てて笑った。
と、白い風船が飛んで行ったのが見えて、わたしは、その下を見た。
風船をたくさん持ったお姉さんが、小さい子供達に配っている。
わたしは白い風船を見上げた。
青空にある白い雲に、あまり似ていない風船の色。
白い風船って、羽みたい。
形は全然似ていないけれど、白くて軽くて旅する鳥のようにふわふわと大空に向かって飛ぶことができる。
白い風船が見えなくなると、わたしはお姉さんが持っている風船を見つめた。
パステルカラー。
ふんわりした色が可愛くて、小さい頃からわたしが大好きな色。
パステルピンク、パステルブルー、パステルイエロー、パステルグリーン、パステルパープル、パステルオレンジ……。
ビビットカラーは、もう他の子供達がもらったのだろうか、風船の束は、パステルカラーだけだった。